授業のための参考書籍紹介:『食の世界地図』

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授業作りを助ける1冊

 sogeoです。地理の授業づくりを進めるにあたって参考になる書籍の紹介をします。高校地理必修化に伴い、初めて地理の授業を担当する先生方はもちろん、地理を教え慣れている先生方にとっても有用な1冊です。生徒に薦めてより深い学びを促すことにも使えます。

 今回はこちらの書籍です。特に「生活文化」「民族・国家」「農林水産業」に関連する単元で活用でき、世界各地の事柄に触れられるので地誌学習にも活用できます。地理総合の柱B(1)「生活文化の多様性と国際理解」や、地理探究の柱A(5)「生活文化、民族・宗教」などでも活用できそうです。↓の各ボタンからご確認いただけます。

21世紀研究会(編), 2004, 文藝春秋

概要

 グローバル化が進んで多様化し、国境を感じることも少なくなってきた食文化。しかし、様々な料理やその食材が、それぞれの発祥地では多くのエピソードを持っています。食材の扱われ方、調理法の起源、言語や人名との関わり……。雑学的な内容も含みつつ、生活文化が持つ地理・歴史性を楽しく紐解いていくことができます。

 第一章では、新大陸の食材が世界の食文化をどう変えたか、が扱われます。地理の農業分野でも「新大陸農耕文化」などが出てきますが、大航海時代を経て世界に渡った食材たちを知識として押さえながら、様々なエピソードとともに学ぶことができます。以前の動画で紹介した「地理の授業ネタ 新大陸と野菜:「玉蜀黍」について」でもそうですが、エピソードと結び付けることで当時の人々の反応を近くに感じ取ることができ、学習を助ける効果が見込めます。

 第二章・第三章ではいろいろな料理や食材のルーツや語源について掘り下げられます。第四章では人物名が関係する料理名についての世界各地のエピソード、第五章では各国の食をめぐる「ことわざ」が紹介されます。また、巻末には世界の料理小事典として、様々な料理の概要とその名称由来がまとまっており、ここを読むだけでも知識が増強されます。

21世紀研究会(編), 2004, 文藝春秋

印象的な部分や感想

 人々が工夫して作り出してきた現在の生活様式を学ぶ地理において、身近な料理や食材は、いろいろな単元を横断してその繋がりに気付く、有効な「教材」になります。分野をまたぎ、世界の人々の息遣いを、空間と時間を超えて感じることができる、地理学習の魅力に触れられる一冊です。

 個人的には、日本にも食にまつわることわざや慣用句がたくさんありますが、それの海外バージョンを知ることが出来る第五章を特に面白く感じました。イギリスにおける「パン屋の1ダース」という言葉が13を意味する、という内容には、驚くとともに、政府の法整備と、それから逃れるための民衆のやむにやまれぬ工夫を知ることができ、現代の日本社会でも同様のケースがありそうだと考えを広げるきっかけになりました。「羹に懲りてなますを吹く」は、同様の事例がトルコにおいてホットミルクとヨーグルトで使われている、というのも興味深く感じられました。

 世界の文化に触れて回ることで、いろいろな不思議を新たに発見し、探究活動のためのきっかけとなる「問い」を持つことにも繋がるといえます。地理的な各単元の繋がりに関する視点を掘り下げ、また雑学を増やして話のネタにもできる書籍として、教材作成のための研究はもちろん、生徒に推薦して関心・意欲を刺激することにも使えます。少し古い本で、電子書籍版はありませんが、ぜひ下の各ボタンからご利用下さい。

21世紀研究会(編), 2004, 文藝春秋

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