ブログ:2022年度 大学入学共通テスト 地理Bの各設問について

ブログ記事 ブログ
スポンサーリンク

共通テスト地理B 各設問の振り返り

 sogeoです。前回の記事「ブログ:2022年度 大学入学共通テスト 地理Bの所見」では、2022年1月15日に実施された試験について、全体的な所見を書き記しました。今回は、それぞれの設問について、その考え方や感じたことを残しておきます。

 前回の記事と同じく、来年度以降に問題を比較・検討するための、自分自身の備忘録としての面も強いです。分かりやすい書き口というよりは独り言ですが……一応の共有ということで、ご興味のある方はお付き合いいただければと思います。

大問1

 毎年変わらない構成、第一問は自然環境。全体的に「難しい」という声が聞かれましたが、知識だけで勝負する色合いの濃い分野ながら、考察もしっかりと必要な、上手な作りの問題も多いと感じました。

 問1は面食らう受験生もいたかもしれませんが、やはりプレートの境界、とくに海溝の位置の把握は重要。海溝(深い)のすぐ近くには弧状列島(海から顔を出して陸地になるくらいには高い)ができるわけで、大陸棚のような浅い場所が広く形成されるはずはない。

 問2は即答可能、アルプスからくる川の方が標高も高いし土砂も多い。

 問3はセンター型地理で必須の「2個2個に分けて考える」が効果的。砂漠のない①・②のペアは、赤道に近いHや流量の多いG(長江)、Hの方が赤道に近く常緑広葉樹が多いだろう。

 問4は①だけ内側に+がある。乾燥地のオーストラリア内陸部は、降水量は年中-になるはずで、+になるのは夏の気温(←南半球であることに注意)。今回は答えがダイレクトに出るが、1マス分かればあとは芋づるで全部確定。きちんと照らし合わせて「うん、そうだよな」と納得しておく。

 問5は既に与えられた中部と南部を塗りつぶし、大地溝帯の存在から火山が無いはずがない東部がチ、あとはアトラス山脈から地震を類推。

 問6は、勢いでマを「台風シーズンか」と飛びつくと引っかかる。マは唯一雪崩がゼロ、さすがにこれは6~8月、梅雨シーズンで土砂災害が多い。あとは雪崩が多めのムが3月絡みか。ミは北海道で雪崩がわずかにみられる。

大問2

 資源・エネルギー関係の問題。単に林業・水産業や鉱工業の見方だけでなく、環境問題としての観点で、やはりSDGsの意識も感じられます。

 問1は、Aの文章の前半が「偏ってる感」を出してきており、石油のミスリードを誘っているのかもしれないが、やはりエネルギーの最大の消費国は中国であり、生産国も同じということは石油ではありえない。そして西アジアに△マークがたくさんある。

 問2は、増加ペースの早いカがアフリカ、そしてアジアは人口の幅の増加以上にエネルギー消費の幅が増えていっている。これも短めの時間で打ち倒したい。

 問3は、具体的な国名を必要としないので、資料の説明をするだけ。あまり地理の知識は必要ないが、言葉の意味を少しは知っておこうというタイプか。サは「脱工業化」から減少しているc、スは元々はかなり少なかったが最近増えた……ということを言いたがっている。

 問4も「データの分析」に過ぎないが、多少なりとも各国の人口規模の知識が必要というメッセージ。eは正、fは大体の割り算をして確かめると正、gはさすがにカナダ。

 問5は面白い3次元グラフ。タのみに偏っているうえに輸出に回していないM国は、国の選択肢から、「経済力が低めで、国内でまだまだ生活に薪炭材利用」、と考えてエチオピアにできれば、あとはセルバの森林減少(or冷帯材は値段的に輸出額が大きくなりそう)を想起。

 問6は即答問題。マングローブの伐採がポジティブなわけがない。

スポンサーリンク

大問3

 村落・都市と人口のテーマ。個人的には時間を食う問題が多かった印象ですが、実社会を眺める視点を持てる問題構成。

 問1は、全部正しそう、と思ってしまう受験生もいたかもしれないが、舗装された幅の広い道路は「つくられた」だけで、全部のあぜ道がそれに化けたわけではない。

 問2は、まさに「言語化」のプロセスが重要。まずはア~ウについて言語化、次いで3つの施設について言語化、そしてそれらのペアを作る……という流れ。ア:絶対数が多く、人口の多いところには特に集まっている。イ:少なめだが、人口の多いところに分布する傾向。ウ:イと同じく少なめだが、人口が少ないところに分布する傾向。 そして、交番はこの中では一番数が多くなりそう(人の多いところに特に必要)、市民ホールは人の多いところに作るべき、ごみ処理施設は人の少ないところに作りそう(悪臭とか)、と、人々の「ラクのしかた(便利に生きたい)」を考える。

 問3は難しめかもしれないが、ジェントリフィケーションについて。①は遠くて不便、②と③は賃料が減っているので寂れる方向に向かっている、と考える。時間軸を冷静に分析し、かつては貧困率が高かったところ、だけど近年大卒者が増えたりして賃料増もしている、便利で上り調子なところ。

 問4も難しめだが、やはり言語化で分析。ただし都市名とそれが属する国名や特徴は分かっていないといけないので知識も必要。クは露骨に中南米からが多いので、旧宗主国絡みで関係性の深いスペイン。ロンドンも、同じく金融の街フランクフルトも、経済の観点からアメリカとの結びつきは強いはずなので、Bよりは全体的に割合の多いAの方がアメリカっぽいか。そう考えると、フランスは距離的にも植民地だった関係からも、アフリカとの関係性が納得できる、という落としどころ。

 問5は、さすがにDの2マスは、国全体の状況としてはヤバすぎる。Eを国全体として考えたとき、やや働く世代の多い③がシンガポール、少子高齢傾向の強い④が人口減少が始まってきたヨーロッパらしい状況と考える。

 問6は単純に各国の状況を当てはめていける。マレーシアは消去法が妥当か。かつて高すぎるバングラデシュ、元から低い①はカナダ、出生率の減少具合があまりにも急速な②が韓国。どれも基礎的。

大問4

 今年の地誌は南米でした。一時期なくなっていた比較地誌の側面も入ってきて、工夫を感じられました。そんなに難しくはない印象です。

 問1は、赤道を引き(とりあえずどんな地図でもやるべき)、それを挟んだ気圧帯の移動から、7月と1月の降水量の違いを分析することと、上流が赤道から遠いEは流量が少なくなるだろうという判断。

 問2は、まだ全体的に南米の技術では再エネは少ないはずという点、そしてブラジル(コロンビアも)の水力で判断するのが良いか。

 問3は「データの分析」に過ぎない、そしてきわめてよくあるパターン(「絶対数か、相対数か」。)コーヒーの割合は減少しているが、全体として貿易が拡大しているなかで、輸出額が減少しているかどうかは読み取れない。よっぽど他の化学製品などで代替可能になった非効率的なもの(あるいは枯渇してしまったもの)でもなければ、絶対数自体が減少することは稀。

 問4は、マイナー寄りの国で焦るかもしれないが、まだ経済の弱いクが、環境的にも厳しく白人も入ってきにくかった高地のボリビアだろうし、人口のかなり多いブラジルは一人当たりGNIで不利だろうというところから考える。どうやらブラジルは所得格差が大きいらしい、ということを改めて知ることができる問題。

 問5は、チリ中部のCsを覚えていても、首都の場所までそこだったか? というところに不安を覚える受験生がいたかもしれないが、ご丁寧に首都マークを添えてくれている。ニュージーランドは基本的にCfb。③と④はどちらにも当てはまる。

 問6もやはり「言語化」が重要プロセス。まず鉱産物の割合が高いサがチリ(銅)であることを即答。そのうえで、チリもNZも、X・Yともに近年は関係性が希薄になり東アジアとの関係性が強まった、ということが読み取れるが、その中でもとくに減少幅の大きいYが、かつては結びつきが強かった(宗主国)ものの最近は距離的な面もあって離れていったヨーロッパ、と考えられる。

スポンサーリンク

大問5

 地域調査の問題は、北海道でした。割と試行調査のときのような、言葉の使い方ですぐ分かる、日本語力の検査的なものも多かった印象です。できるだけ落としたくないところ。問4は落とさせようとしている問題な印象ですが、これも知識が絶対に必要というわけではなく、表の意味するところを言語化すれば導けると思います。

 問1は、ことごとく位置をハズされる樽前山が不憫。②が、「ギリ見えなくもないか……?」 となるかもしれないが、③が露骨なので簡単。

 問2は、小地形の形成メカニズムで、沿岸流という用語の知識は必要か。イとウは自然科学的なメカニズムで導ける。冬は降水が降雪になるので流量にすぐ反映されずに減少し、そのせいで土砂が運ばれてこなくなる。

 問3もデータの分析で、大問4の問3と同じパターン。割合は低い。即答だが、④になっているせいで時間はかかるかもしれない。

 問4は難しめ。もうちょっとヒントが欲しい問題ではあるが、それでも言語化してゆっくりと。Aは「苫小牧市の割合は変化が小さいが、苫小牧市の中ではものすごく急減している」(=苫小牧以外の市も含めて全体的に衰退気味の産業か)。Bは「どちらも爆増している」、すなわち苫小牧市がかなり力を入れて伸ばした(他の市以上に力を入れた)産業のようだ。Cはもともと少なく、最近は特に苫小牧市内での減少が(他の市以上に)大きく、Bの産業に食われ気味のよう。 今度は3つの指標の言語化だが、食料品は普遍的に必要なものなのであまり特定の市に偏らないはず。パルプ関係は、ペーパーレスも言われる昨今、最近になって急に増えるとは思えない。やはり成長著しいBは石油関係か? そして、偏りの小さいCが食料で、苫小牧市としてはそれなりの地位を保ってはいるものの全体的に下火に向かっているAがパルプ、と考えていける。

 問5は短めに済ませたい問題。dは若い世代が多そうな場所、eは30年前の入居者が高齢者になりつつありそう。全体的に高齢化傾向のみられるYが最近の時代。働き手とその子が多いと読み取れるキがd、と導けるはず。

 問6は試行調査のときを思い出すような問題。サ、シは地図を読み取れば秒殺。タ、チは温室効果ガスの削減の観点を考えてほしいようで、「バス」という言葉がミスリードを誘っている感があるが、予約に応じた運行は、タの「大型の駐車場」よりよっぽど二酸化炭素を出しにくいはず。というか、タのような開発は日本中でたくさん起こっており、ポジティブな文脈では捉えにくい。会話文の最初もきちんと読んだほうが良いというメッセージも含まれており、ショッピングセンターに食われることで空き店舗はもっと減少してしまうだろう。

全体的に好印象でした

 かなり長くなりましたが、各設問について個人的な備忘録を記しました。知識もある程度必要、かつ「教科書を持ち込んだとしてもそれだけでは解けない(論理的に考える力が必要)」というのが、一問一答的な対応しかできない人間ではなく、複雑化する世の中で活躍する人材を育成したいという気持ちを感じました。

 これまで以上に、「参考書等で独学」では対応できない問題が増えていますから、「授業を大切にしよう」というメッセージも伝えやすいと思います。社会科を直前に詰め込んで解決しようとする姿勢では、終わってから泣くことになってしまいます。

 本記事の内容と、前回の記事「ブログ:2022年度 大学入学共通テスト 地理Bの所見」を併せて、今年度の共通テスト地理に関する所見としてここに納めておくことにします。受験生も、送り出した先生方も、本当にお疲れさまでした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました