授業のための参考書籍紹介:『ジェントリフィケーション』

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授業作りを助ける1冊

 sogeoです。地理の授業づくりを進めるにあたって参考になる書籍の紹介をします。高校地理必修化に伴い、初めて地理の授業を担当する先生方はもちろん、地理を教え慣れている先生方にとっても有用な1冊です。生徒に薦めてより深い学びを促すことにも使えます。

 今回はこちらの書籍です。特に「村落・都市」に関連する単元で活用できます。地理総合の柱B(2)「地球的課題と国際協力」や、地理探究の柱A(4)「人口、都市・村落」などでも活用できそうです。↓の各ボタンからご確認いただけます。

藤塚 吉浩(著), 2017, 古今書院

概要

 都市は生き物である、と言われることがあります。人々の生活の在り方が変化するなかで、都市は(ときに無秩序に)拡大したり、栄えたり衰退したりします。都市の再生と、人口の都心回帰に関わる「ジェントリフィケーション」は、共通テスト2022地理Bでも出題されていました。

 本書籍では、第10章の構成で、ジェントリフィケーションについての研究成果が報告されています。第1章では、ジェントリフィケーションという言葉の定義について確認され、その研究手法と展望について整理されます。また、日本でのジェントリフィケーションについて、その発現可能性についても論じられ、今後の章での事例紹介の前書き的立ち位置になっています。

 これ以降の章では、具体的な地域の事例が挙げられます。複数の地域の事例がまとめられた第8章のほか、第2・3・7・10章では日本の事例が、その他の章ではロンドン、ニューヨーク、ベルリンといった欧米諸国の事例が紹介されます。国内外両方の事例において、地図や風景写真が豊富で、地域の様子を感じ取りやすくなっています。

藤塚 吉浩(著), 2017, 古今書院

印象的な部分や感想

 高校地理では、スプロール現象やインナーシティ問題といった都市問題と、それらに関する地域開発の事例として大ロンドン計画やドックランズの再開発といった内容が出てきます。老朽化した設備を一新して都心が再高級化することについては、欧米での事例が多く、日本での話はあまり多くは扱われていないように感じられます。

 しかし本書では、京都・東京・大阪といった日本の都市部におけるジェントリフィケーションの事例が紹介されており、これまでよりも身近な事柄として認識を深めるきっかけになりました。第1章で語られる、「情報サービス業の進展(→職場に近いことを評価する人の増加)」「郊外育ちの人が、地価高騰も受け内部での生活を望む」「低金利からくる不動産投資の活発化」などの理由から、日本でも起こりやすいといえる、という点が興味深かったです。

 また、地域開発の形として、例えばフランスのパリでは地域によって「修復・保全型」と「クリアランス型(一掃型)」などがありますが、歴史的景観を守る観点から日本の都市の再生について考えてみる、という思考活動は、生徒も巻き込んで行えると効果的ではないかと感じました。今後、学習活動として練り上げていきたい所存です。

 これから社会に出て労働に従事したり生活を営む生徒たちにとって、どういった場所に住むかといった人生設計を考えるために、社会構造の変化とそれに伴う都市の在り方の展望は重要なテーマと言えます。より良い生活を作るための探究活動のためのきっかけにも繋げられるといえます。教材作成のための研究はもちろん、(少し難しい専門書で、金額も少し高いですが)生徒に推薦して関心・意欲を刺激することにも使えます。電子書籍版はありませんが、ぜひ下の各ボタンからご利用下さい。

藤塚 吉浩(著), 2017, 古今書院

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