授業作りを助ける1冊
sogeoです。地理の授業づくりを進めるにあたって参考になる書籍の紹介をします。高校地理必修化に伴い、初めて地理の授業を担当する先生方はもちろん、地理を教え慣れている先生方にとっても有用な1冊です。生徒に薦めてより深い学びを促すことにも使えます。
今回はこちらの書籍です。特に「民族・国家」「中南米地誌」に関連する単元で活用でき、世界各地の事柄に触れられるので地誌学習にも活用できます。地理総合の柱B(1)「生活文化の多様性と国際理解」や、地理探究の柱A(5)「生活文化、民族・宗教」などでも活用できそうです。↓の各ボタンからご確認いただけます。
概要
5年ほど前に世間を騒がせたパナマ文書。企業の実態を暴く、重大な機密文書の漏洩でした。租税回避地(タックスヘイブン)として、その収入を主として運営されている国・地域については地理でも出てきますので、そこの理解を深めるべく手に取ってみました。
第一章では、タックスヘイブンでの企業設立や取引実態についての膨大なデータが記されたパナマ文書についての概要が説明されます。第二章では、実際に取られた租税回避の方法について、Googleなどの大企業の事例も紹介しつつ、その規制強化について語られます。
第三章ではそれを膨らませ、世界の主要国同士の関係性(特に金融面)への影響がどれほどのものかが説明されます。そこから第四章・第五章では私たちが暮らす日本社会に視点を移し、現在の取り組みや今後起こり得る変化についての考察がなされます。
印象的な部分や感想
キャッシュレス化の推進などと併せて、ポイントの付与などの取り組みを通したマイナンバーカードの普及がすすめられるなど、マイナンバーについての注目も高まっています。このマイナンバー制度の導入も、租税回避を規制するための動きで、資金の移動を透明化する目的から生じたものである、ということ自体は理解していました。確定申告にもマイナンバーの入力が求められるなどの変化も感じていましたが、本書を通して、そういった点に対する解像度が増したと感じます。
はじめは、タックスヘイブンに関する国際的な理解を深めようという意識で読み始めました。しかし、どちらかというと途中からは、外国人が違法な労働に従事させられることを封じたり、反社会的なお金の動きを抑えるなど、日本の社会問題を改善していくための視点について考えるようになっていました。マクロのつもりがややミクロになりましたが、タックスヘイブンがどこか遠い場所での他人事ではなく、社会のつながりを意識することができました。
18歳で成人となる高校生を相手に教員を続けるなかで、「脱税」と「節税」の違いなど、自分たちの生き方と金融社会への目の向け方を考えるきっかけになりました。コロナワクチンで名の知れたファイザーも関連していることが分かり、身の回りに目を向け、探究活動のための「問い」を持つきっかけにも繋がるといえます。授業の際の話のネタにもできる書籍として、教材作成のための研究はもちろん、生徒に推薦して関心・意欲を刺激することにも使えます。紙のものと電子書籍版がありますので、ぜひ下の各ボタンからご利用下さい。
コメント